利便性の検証では、利用状況を再生回数や再生時間などからチェック
利便性の検証では、「見やすさ・わかりやすさ」「ユーザービリティ」といった情報の質の変化を見ていきます。まずは、動画活用前後で共有した情報の利用状況を確認するところからはじめ、動画コンテンツが一定量確保できるようになったら、より質の高い動画情報の内容、ユーザービリティ向上に向けた方法を探っていきましょう。
前編記載の生産性の検証同様、利便性の検証においても、できるだけ数値を用いると客観的に判断しやすくなりますが、そのひとつとして「視聴ログ」は有効な指標になります。視聴ログとは、サーバーに蓄積された動画ファイルのアクセスデータを解析し、数値化したものです。
動画専用の解析ツールは、複雑な設定等が不要で利用ハードルが低い点が特長です。動画配信プラットフォームサービス(OVP:Online Video Platform)では視聴解析機能が標準搭載されており、手軽に視聴ログを確認することができます。なお、グーグル社の「Google Analytics」などのWeb解析ツールでは、デフォルト設定の場合、動画ページの表示回数程度はわかりますが、再生時間などの時間軸を把握することはできません(複雑な設定+開発(製作)を施せばこの限りではなく、再生時間軸も把握可能です)。
視聴ログは、サービスにより多少違いがありますが、特に押さえておきたい指標は、次の4つです。
●再生回数
●再生時間
●視聴率(再生回数/プレイヤー表示数)
●再生率(再生時間/総尺)
まずは、視聴ログから「どのくらいアクセスがあり、日や月単位での推移はどうか」「一回あたりどのくらいの時間見るのか」「視聴しやすい曜日、時間はいつか」といった視聴傾向を見てみましょう。動画活用前後の比較であれば、社外で実施した新製品発表会でのプレゼンテーションには10名しか参加できなかったが、動画化することにより2,000名が閲覧できた、といった具合です。また、設定次第で、どの動画を誰がどこまで見たかも把握可能ですので、特に利用頻度の高い人、グループ、拠点などを確認し、利用の温度差が生じていないかを確認することもできます。
ストリーミング配信では、再生回数の他、再生時間が把握可能です。再生回数だけでなく再生時間にも注目することにより、より立体的に視聴状況が見えてきます。これにより、動画活用前後の比較だけでなく、どんな動画がより利便性が高いものかが明確になってきます。例えば、3分の製品デモ動画A、Bで以下のような結果が出たとします。
動画A | 再生回数:500回 | 平均再生時間:30秒 |
動画B | 再生回数:500回 | 平均再生時間:2分50秒 |
再生回数だけで評価すれば動画A、Bの利用状況は同程度と考えられます。しかし、平均再生時間を見ると動画Aの視聴はほぼ冒頭のみなのに対して、動画Bはクリックした人はほぼ最後まで視聴しています。この場合、視聴時間の点から、動画Bの方が情報の浸透度が高いと考えられます。
視聴状況を把握したら、課題に対し考えられる原因を洗い出し改善策を検討します。例えば、
・再生回数が極端に少なければ、告知方法や告知量は十分か?
・告知は十分だとしたら、掲載サイトでの導線や説明文などにわかりにくい点はないか?
・平均再生時間が短いようなら、映像が見にくくないか(雑音や暗いなど)?
・1回あたりに見やすい長さになっているか?
などです。改善と実行、検証をくり返すことにより、より質の高い動画情報の共有について精度を高めていきます。
また、活性化策として各コンテンツに「いいね」や「スター」などの評価ボタンをつける、動画掲載ページに再生回数ランキングを掲載する、コメント欄を設置するなどの方法も有効です。見る側はどのコンテンツを優先的に見ていくべきかを判断しやすくなりますし、運営側にとっても各コンテンツの評価や反応をダイレクトに把握できます。
視聴ログの参考例として、当社の動画配信プラットフォームサービス「J-Stream Equipmedia」で取得可能なログの一部を記載します。Equipmediaでは、視聴ログを管理画面上で確認可能です。
再生回数 | その動画が再生された回数 |
平均再生時間 | 1回の再生で動画が視聴された平均時間 |
再生率 | 動画尺に対して、どれだけ再生されたかの割合 |
再生完了率 | 1回の再生で最後まで視聴された割合 |
表示回数 | 動画プレイヤーが表示された回数 |
視聴率 | プレイヤーの表示回数に対して、再生された割合 |
累積再生回数 | その動画がこれまで再生された総回数 |
視聴機器 | 動画を視聴した端末(PC、iPhone、iPad、Android、その他) |
視聴ブラウザ・OS | 動画を視聴した際のブラウザ・OS |
関連ページリンク | 再生プレイヤー内に設置した、関連ページリンク(最大3つ)のそれぞれがどれだけクリックされたかの回数 |
再視聴数 | 動画再生終了後、再視聴ボタンをクリックした回数 |
おわりに:まずはスモールスタートで始め、効果次第で徐々に拡大
動画は、いまやごく身近なコミュニケーションツールとなりました。活用についても、効果検証についても、成功させるポイントは、まずはスモールスタートで始めて、徐々に拡大していくことです。
2014年8月末に、当社が行った調査では、企業内情報共有での動画活用経験者が挙げた動画の活用メリット上位3つは、「理解しやすいこと」「手軽であること」「共通認識が持てること」でした。一方、「情報共有時間の短縮」「隙間時間の有効活用」「最新情報の取得」については、動画経験者(経験したメリット)と非経験者(イメージしているメリット)で10ポイント前後の大きな開きが出ました。つまり、実際に動画を活用してみて気がつく部分も多いのです。動画活用に興味をお持ちでしたら、まずは無理のない範囲で最初の一本を作成し感触を掴んでみてください。
そして、自社にとって動画活用が有効だと判断すれば、さらに本数を増やす、高度な演出を取り入れてみる、検証結果を活かした動画を企画・制作してみる、オンデマンドに加えライブも利用してみる、など新たなチャレンジを追加し、ステップアップさせていきましょう。
その際、もし動画活用の進め方で迷うようなことや、プロの動画制作・配信についてご関心がある場合は、ぜひJストリームにお気軽にお問い合わせください。