2021.03.05

近年のICT(情報通信技術)ツールの普及や、働き方改革による業務時間の効率化などを背景に、eラーニングやオンライン研修という言葉を目にする機会が増えました。
こうした中、「自社でもオンライン研修を導入したい」「はじめてオンライン研修を実施するにはどうすればいいか分からない」といった、企業の人事担当者や教育担当者もいることでしょう。
ここでは、オンライン研修の導入方法やメリットなどについて分かりやすく解説します。
《 目次 》
オンライン研修とは、インターネット回線を使い、パソコンやタブレット、スマートフォンで受講できる研修のことを指します。Web研修やオンデマンド研修ということもあります。
オンライン研修の最大の特徴は、インターネット回線とアクセスする端末があれば、講師や受講者などの参加者が同じ場所にいなくても研修が開催できる点です。一方、自社の会議室や研修所など、リアルな場所に集まって講師と受講者などが対面して開催する研修は、集合研修や対面研修と呼ばれています。
従来、企業が実施する研修といえば集合研修が一般的でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延を背景に、集合研修をオンラインへと切り替える企業が多く見られたことで、オンライン研修が注目されるようになりました。
その後も、企業の人材育成におけるオンライン化は加速しており、新入社員、階級別・職種別の研修など、企業全体の研修をオンラインで実施する企業が多く見られます。
リアルに対面する集合研修(対面研修)とオンライン研修では、どのような点が異なるのでしょうか。2つの違いを比較すると下記のようになります。
| 集合研修 | オンライン研修 | |
|---|---|---|
| 開催場所 | 会議室や研修施設、教室など、同じ場所に集合して開催。 | 1ヵ所に集合する必要はなく、自宅、サテライトオフィス、遠隔地にある支社などからも参加可能。 |
| 開催時間 | 決められた日時に開催。 | 決められた日時で開催するか、受講者がいつでも自由に受講できるようにするか、研修形式によって異なる。 |
| 開催のために必要なもの | 参加者の日程調整、研修会場の予約・設営準備、研修資料の印刷など。 | Web会議ツールなどのオンライン研修ツール、インターネット回線、パソコンなど。 |
| コスト | 会場使用料、受講者・講師の会場までの交通費や宿泊費。 | インターネット通信料(既存回線が使用できれば不要)やWeb会議ツールといったソフトウェアの使用料。 |
| 学習効率 | 講師が受講者の反応を見ながら進行できるため、ロールプレイングや接客、技術講習といった実践型の研修、ワークショップに向いている。 | 録画動画を配信する形式であれば、受講者は繰り返し学習可能。習熟度をデータ管理することもできる。 一方通行の学習になりがちで、モチベーションを保てないこともある。 |
| コミュニケーション | 参加者同士のコミュニケーションがとりやすい。 | 参加者同士の関わりや交流機会は、集合研修と比べて少なくなる。 |
| 通常業務への影響 | 研修のあいだ、参加者が一斉に職場を離れることとなり、通常業務への影響に配慮する必要がある。 参加者数が多い場合には、職場内でローテーションを組むなどの対応が必要。 | 受講者・講師ともに会場まで移動する必要がなく、通常業務への影響を必要最小限に抑えることが可能。 |
オンライン研修の実施形式には、大きく分けて「録画配信型」と「ライブ配信型」の2種類があります。また、録画配信型とライブ配信型のメリットを併せ持つ「疑似ライブ配信型」というものもあります。
ここでは、オンライン研修の録画配信型、ライブ配信型、疑似ライブ配信型、それぞれの特徴を解説しましょう。
録画配信型はオンデマンド配信とも呼ばれ、配信サーバーにアップロードされている動画を、受講者が好きなタイミングで見られる研修形式です。eラーニングと呼ばれる学習方法は、現在このオンデマンド配信で行われるのが一般的となっています。受講者は、時間や場所に縛られずに自分のペースで受講できるほか、苦手分野を繰り返し視聴することも可能です。
運営担当者側の視点で見ると、動画を事前に用意するため、クオリティの高い教材を作り込むことができます。たとえば、講義形式で収録中に、言い間違えや言いよどみなどがあっても撮り直せます。また、編集で効果音やナレーションを加えたり、わかりやすい図解やテロップを差し込んだりといった、学習効果を高める工夫を凝らすことも可能です。
動画制作には労力がかかりますが、一度制作すれば繰り返し使用でき、同じクオリティの研修内容を一律に提供できるメリットがあります。
ライブ配信型はその名のとおり、ライブ映像を配信する研修形式です。テレビの生放送と同じようなもので、「インターネット生放送」や「インターネット生中継」と呼ばれることもあります。受講者は決められた配信時間に視聴し、講師との質疑応答など、双方向のやりとりが可能です。
運営担当者側の視点では、集合研修と同じような雰囲気で研修を行うことができますが、インターネット回線の障害やライブ配信用の機材にトラブルが発生したときには、即時、研修が中断するリスクがあります。また、ライブ配信でも効果音やテロップなどを入れることも可能ですが、専用の配信機材やオペレーターの手配が必要です。
疑似ライブ配信型は、あらかじめ収録した動画をライブ配信する研修形式で、録画配信型とライブ配信型のメリットを併せ持っています。受講者はライブ配信型と同様に、決められた配信時間に視聴します。
運営担当者側の視点で見ると、ライブ配信型ではマイクやカメラ、配信機材、スタッフを手配する必要がありますが、疑似ライブ配信型の場合は事前に収録した動画を配信するだけなので、最小限の配信機材とスタッフで研修を実施することが可能です。機材操作は最小限なので、オペレーションミスの発生リスクもライブ配信型と比べると低くなるでしょう。
疑似ライブ配信型のメリットを活かした研修のやり方として、研修のメインとなる内容はあらかじめ制作した録画動画で配信し、受講者からの質問はリアルタイムにチャットで受けつける方法があります。研修内容は録画配信で一定のクオリティを保ちながら、ライブ配信の双方向性を活かした研修が行えます。

集合研修をオンライン研修に切り替えた場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主に、オンライン研修を開催する側のメリットについて見ていきましょう。
インターネット環境とパソコンやタブレットなどの端末さえあれば、受講者、講師、運営担当者がそれぞれ離れた場所にいても研修を開催できます。企業の場合であれば、受講者や講師役の社員が別々の支社や拠点にいても研修に参加できるため、遠隔地にいることを理由に受講をあきらめる必要もありません。これにより、人材育成の機会損失を防ぐことにもつながるでしょう。
集合研修を開催する場合、会場の確保をはじめ、講師への依頼や参加者の業務調整など、スケジュールを調整しなければならないことがたくさんあり、運営担当者にとってもかなりの労力です。オンライン研修であれば、参加者を特定の場所に集合させる必要はありませんので、スケジュール調整がしやすくなります。
ライブ配信の場合は決められた日時の開催にはなりますが、パソコンなどからすぐに参加できますし、録画配信型であれば受講者が好きなときに受講できるため、日程調整すら不要です。
オンライン研修は、運営準備の面でも講師と運営担当者の負担を軽減します。
たとえば、録画配信型であれば、一度制作した動画を繰り返し使用できるため、講師が研修のたびに教材を準備したり、会場へ移動したりする必要がありません。特に、社員が講師役になっている場合には、その業務負担を減らせます。運営担当者も同様に、会場準備、会場への移動、連絡業務などの手間が軽減されます。
集合研修の場合は、参加者が研修会場まで集まるための交通費や、場合によっては宿泊費が必要です。また、社外に研修場所を借りた場合には、会場使用料がかかります。オンライン研修では、これらのコストが不要となります。
録画型のオンライン研修では、受講者は自分の理解度に合わせて、必要な部分を何度も見返すことができます。 一度の受講で理解が難しかった内容も、繰り返し学習することで知識として定着しやすくなります。また、業務で必要になった際に該当箇所を見直すといった、実践的な活用も可能です。
多くのオンライン研修サービスには、学習管理の仕組みがあります。これにより、人事担当者は各受講者の進捗状況やテストの結果などをデータとして簡単に把握・管理できます。 未受講者へのフォローアップも効率的に行えるほか、データを分析して研修プログラム自体の改善につなげることも可能です。
多くのメリットがある一方で、オンライン研修には特有のデメリットも存在します。ここでは、代表的なデメリットとその対策について解説します。
オンライン研修は、受講者側のインターネット環境に大きく依存します。通信状況が不安定な場合、音声が途切れたり映像が固まったりして、研修内容が十分に伝わらない可能性があります。
研修を実施する前に、推奨される通信環境を事前にアナウンスすることが重要です。また、重要な研修の場合は、有線LAN接続を推奨したり、事前に接続テストを行う機会を設けたりするとよいでしょう。
手先の細かな作業や身体を使った実習など、実践的なスキル習得を目的とする研修は、オンラインで実施するのが難しい場合もあります。 画面越しでは、講師が受講者一人ひとりの動きを正確に把握し、適切なフィードバックを行うことが困難なためです。
座学や事前学習はオンラインで行い、実技の直接指導のみ集合研修で実施するといった「ハイブリッド型研修」を取り入れるのが効果的です。 これにより、オンラインの利便性と対面での実践的な学習の双方のメリットを活かすことができます。
自宅など、他の人の目がない環境で受講する場合、緊張感が薄れ、集中力が持続しにくいという課題があります。講師からは受講者の表情や様子が見えにくいため、理解度を把握しづらい側面もあります。
一方的な講義だけでなく、チャット機能を使った質問の受付、投票機能の活用、ブレイクアウトセッションでの少人数ディスカッションなど、受講者が能動的に参加できる工夫を取り入れることが重要です。
集合研修では、休憩時間やグループワークを通じて自然発生的に生まれる受講者同士の雑談や情報交換が、オンラインでは起こりにくくなります。これにより、一体感の醸成や人脈形成の機会が失われる可能性があります。
研修の冒頭で自己紹介の時間を設けたり、意図的に雑談タイムを作ったり、研修後にオンライン懇親会を実施したりするなど、交流を促すための場を意識的に設計することが効果的です。

オンライン研修を始めるためには、どのようなツールが必要なのでしょうか。人によっては、放送局に近いような機材を想像するかもしれません。しかし、必要最小限のツールとして、パソコンやタブレットなどの端末と、Web会議ツール(オンラインミーティングツール)だけでも実施できます。
オンライン研修向けに特化したツールの中には、受講管理や学習履歴管理、職種・階層別のカリキュラム管理など、便利な機能を搭載したものもありますが、ここでは、手軽に利用できるWeb会議ツールを使ったケースで見ていきましょう。
オンライン研修に必要なハードウェアとしては、配信者用・受講者用のパソコンやタブレット、Webカメラ、マイクが最小限の構成になります。Webカメラやマイクは、パソコンやタブレット内蔵の物でも構いません。
講義方式のライブ配信で双方向のやりとりをするなら、音声がクリアになるヘッドホンつきのヘッドセットの使用がおすすめです。また、講師の画面写りが暗くならないように、撮影用照明があるとベストです。最近では、画面映えを良くするためのLED照明やリングライトも販売されています。
録画配信型で事前に自社で動画を制作する場合でも、方法によってはパソコンやタブレット、Webカメラ、マイクなどで十分です。本格的な方法で撮影する場合、撮影用ビデオカメラや三脚、延長コード、ワイヤレスマイクなどが必要です。
ソフトウェアとしては、Web会議ツールが必要になります。受講者、講師、運営担当者のパソコンやタブレットなどにあらかじめインストールしておくのが一般的です。Web会議ツールによって搭載されている機能は異なりますが、音声・映像のオンオフ機能、画面共有機能、チャット機能が付いているものがいいでしょう。
録画配信型の場合は、録画動画をサーバーへアップロードしてオンデマンド配信できるシステムが必要になります。一般的に動画配信システムと呼ばれているもので、インターネット上のサーバーを利用するクラウド型と、自社サーバーへソフトウェアをインストールするオンプレミス型があります。
オンライン研修を始める上で不可欠なのが、インターネット回線です。特に、配信側となる講師や運営担当者は、できるだけ高速で安定したインターネット回線を用意しましょう。無線LANやモバイルWi-Fiルーターは、研修の途中で通信が切断したり不安定になったりするリスクがあるため、有線LANがおすすめです。
また、講師が講義を行う研修では、その場に受講者はいないので広い部屋である必要はありませんが、外の騒音が聞こえたり、誤って誰かが入ってきたりしないような場所での配信が必要でしょう。
オンライン研修を始めるために必要なものがわかったら、次に実施手順について見ていきましょう。
ここでは、ライブ配信型で講義形式の研修を行う場合を例に挙げますが、研修内容や予算など、自社に合ったやり方を検討してください。
たくさんのメリットがあるオンライン研修ですが、Web会議ツールを使う方法では、受講管理や運用規模に限界があります。特に、受講者の受講状況やカリキュラムに応じたきめ細かな管理は、Web会議ツールだけでは対応できません。
そこで、本格的なオンライン研修へとステップアップしたい場合には、LMS(Learning Management System)と呼ばれる学習管理システムの導入を検討してもいいでしょう。インターネットを利用した学習法であるeラーニングでは、多くのサービスがこのLMSをベースシステムにしています。

オンライン研修を成功させるためには、計画的な準備が不可欠です。ここでは、研修の企画から実施までを各ステップに分けて解説します。
まず、「誰に」「何を学んでもらい」「どのような状態になってほしいのか」という研修の目的とゴールを具体的に設定します。目的が明確になることで、その後の研修形式や内容、評価方法など一貫性を持って決めることができます。
ステップ1で設定した目的に基づき、リアルタイム型、録画型、あるいはそれらを組み合わせたハイブリッド型など、最適な研修形式を選択します。同時に、使用するWeb会議システムやLMS(学習管理システム)などのツールも選定します。
| 研修目的の例 | 推奨される形式 |
| 知識の習得、情報共有 | 録画型(オンデマンド) |
| ディスカッション、合意形成 | リアルタイム型 |
| スキルの実践、体感 | 集合研修とのハイブリッド型 |
研修の目的とゴールから逆算して、具体的な内容と時間配分を設計します。オンライン研修は集中力が途切れやすいため、90分に一度は休憩を挟む、飽きさせないための双方向的な要素を盛り込むなど、オンラインならではの工夫が求められます。
受講者に対し、研修に必要なPC、Webカメラ、マイク、安定したインターネット環境などを準備するよう事前にアナウンスします。使用するツールのインストールやアカウント登録が必要な場合は、その手順も分かりやすく伝えます。
研修で使用するテキストやワークシートなどの資料は、データ形式で事前に共有しておくことが推奨されます。 事前に目を通してもらうことで、受講者は研修内容の理解を深めやすくなります。また、当日の進行もスムーズになります。
特にリアルタイム型の研修では、本番前に必ずリハーサルを行いましょう。ツールの操作方法、音声や映像のチェック、時間配分、資料の画面共有などを一通り確認することで、当日のトラブルを最小限に抑えることができます。
オンライン研修の効果を最大限に引き出すためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、研修を成功に導くための具体的な工夫をいくつか紹介します。
研修の目的や、受講することでどのようなスキルが身につくのかを事前に共有することは、参加者の学習意欲を高める上で非常に重要です。 上司からも研修の重要性を伝えてもらうなど、組織全体で研修をサポートする雰囲気を作ることが、参加者の主体的な学びを促進します。
一方的な講義形式が続くと、参加者の集中力は低下してしまいます。これを防ぐためには、双方向性を意識した工夫が不可欠です。具体的には、チャット機能で気軽に質問を募集したり、グループディスカッションの時間を設けたり、参加者に発言を促したりすることが有効です。参加者が「見ているだけ」ではなく「参加している」と感じられる環境を作り出すことが大切です。
研修は実施して終わりではありません。学んだ知識やスキルを実務で活かせるように、研修後のフォローアップが重要になります。例えば、研修内容に関するテストを実施したり、上司と部下で学んだことをどう業務に活かすか話し合う機会を設けたりすることが効果的です。定期的な振り返りを通じて、知識の定着と行動変容を促しましょう。
全ての研修をオンラインで行う必要はありません。知識のインプットは効率的なオンライン研修で行い、実践的なグループワークやディスカッションは対面研修で行うなど、両者を組み合わせる「ハイブリッド型研修」が効果的です。研修の目的に応じて最適な形式を使い分けることで、それぞれのメリットを最大限に活かすことができます。
オンライン研修には、録画配信型、ライブ配信型、疑似ライブ配信型があることをご紹介しましたが、それぞれに特徴があり、これが正しいというものではありません。自社でも実施可能な配信形式を選んで、まずはオンライン研修を始めてみるといいでしょう。
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