2015.09.04
J-Stream Equipmedia
動画企画制作
インターナルコミュニケーション
社内情報共有
エンタープライズにおける動画の用途は、宣伝・販促などの社外向けと社員などに向けた社内コミュニケーションの2つに大別され、社内コミュニケーションでの動画活用は以下の3パターンに分類できます。
本連載では、お読みいただいている方が社内コミュニケーションで動画配信を活用する担当者になったケースを想定し、企画の立て方や運営業務の設計方法、十分な成果を挙げるために注意すべきポイントについて順を追ってわかりやすく解説していきます。本連載をお読みいただくと、社内コミュニケーションでの動画活用が決して難しいものではないことがおわかりいただけると思いますので、是非ご期待ください。
連載第1回では、各論に入る前に、まず既存の社内コミュニケーション業務に動画配信を導入する際に共通する企画の立て方、業務設計の考え方を整理します。
既存の社内コミュニケーション業務に動画を導入するわけですから、なぜ動画が必要なのかという論理構築(社内への説明)が求められるはずです。そこで、社内コミュニケーションの活性化に不可欠な「情報の発信量」と「情報の質」という観点で動画のメリットを整理します。
文章や画像だけの社内コミュニケーションでは、送り手の意図が正確に伝わらない/受け手側が間違った理解をしてしまうことが多くあります。動画には文字では表現しにくい音や動き、表情などをそのまま伝えられるという特長があるため、話し方のテンポや細かなニュアンス、その場の雰囲気などを臨場感たっぷりに表現することができます。
エンタープライズにおける教育や研修といった知識活動の観点でみると、動画は接客スキルや作業手順など企業内の暗黙知をわかりやすく伝えるのに特に向いています。当社の調査でも、社員にとっての動画のメリットとして「理解しやすい・わかりやすいこと」(34.3%)が最も多く挙げられました。
動画配信の特長の1つとして速報性が挙げられます。国内外の各拠点へ社員が説明に回る場合や、印刷物やDVD等を郵送する場合に比べて情報伝達のタイムラグがなく、希望するタイミングで即座に情報の公開・更新が可能になるため、意思疎通のスピードアップにつなげることができます。
できるだけ早く周知したい情報がある場合、海外との時差やシフト制などによる勤務時間帯の違いは大きな課題になりますが、動画配信であれば各従業員が状況にあわせて遅滞なく情報を取得できます。
また同報性という点でみると、動画配信であれば基本的には場所に関係なく全従業員に向けて一斉に情報発信できます。あらかじめ周知した時間に用意しておいた動画を公開することもできますし、ライブ中継を活用すればリアルタイムに会場の様子を伝えることができるため、一堂に会さなくても全社的な一体感を醸成することができます。
速報性・同報性という特長は、拠点数の多い企業ほどメリットがあります。前述の当社調査でも、社内向け動画の利用率は拠点数が多い企業ほど高くなっており、国内拠点30箇所以上の企業の25%、海外拠点ありの企業の20%が社内での情報共有に動画を活用しています。
動画は一度収録して配信すれば、全ての拠点の従業員が何度でも視聴できるため、情報伝達の手段として生産性が高い方法であるといえます。たとえば中途入社向けに研修が必要な場合、入社する度に同じ動画を見てもらえばよいため、繰り返し研修を実施するコストを削減できます。
社内コミュニケーションでは、コスト面での制約による情報量不足が課題になることもありますが、動画配信を活用することにより従来の方法に比べて1情報あたりにかかる人的コスト(移動時間、運営・準備にかかる時間など)や金銭的コスト(交通費、出張費、会場費、残業時間代など)を削減できるため、同じコストをかけた場合、より多くの種類の情報を効率的に発信できるようになります。
動画が持つこれらのメリットを活かすことで、タイムリーでわかりやすい情報を手軽に発信できるようになり、情報の量と質の向上を通じて社内コミュニケーションの活性化を促進させることが可能になります。
続いて、運営業務設計の考え方について整理します。
動画に関連した運営業務は以下の2つに大別することができます。
・「システム面」:セキュリティ対策、視聴のしやすさ、既存システムとの連携など、動画視聴の仕組み
・「運用面」:運用に伴う人的負荷、運用に伴う費用、運用体制の構築など、定常的な運用項目・環境
ただし、運営業務には唯一の正解があるのではなく、各社で異なる前提条件や実現したい企画内容に応じて、採りうる選択肢から最適解を選ぶことになります。
その際は、これからご説明するように、自社の前提条件をあらかじめ抽出・整理しておくことでスムーズに決めることができるはずです。
システム面に関する前提条件では、従業員が「いつ」「どこで」「どのデバイスで」動画を視聴するかといった視聴環境を明確にします。これら3点を明確にすることにより、視聴者に適した通信速度、必要な画質、セキュリティ方法、ファイル形式等が具体化し、動画配信の仕組み等が既存システムときちんと連携できるかの判断もしやすくなります。
以下にこれらの前提条件について詳述します。
「いつ」とは、従業員が視聴しやすい時間帯です。特定の曜日や時間があるのか、もしくは、休憩時間中が視聴しやすい、外出の多い営業担当者であれば移動中の隙間時間が視聴しやすい、シフト勤務のため時間帯が様々、海外拠点とは時差がある、といったことが挙げられます。
「どこから」とは、従業員が視聴しやすい場所のことです。例えば、勤務場所としては国内オフィスのほかにも、海外オフィス、店舗、工場、出向先、外出先や在宅勤務者や休職者が自宅からアクセスするなど、さまざまな視聴場所があります。場所によっては、インターネット環境が十分でないこともあります。
「どのデバイスで」は、視聴対象となる従業員がアクセスしやすいデバイスに対して配信するということです。外出先や店舗、工場、作業現場などでは、モバイルなどパソコン以外の端末のほうが視聴しやすいケースが多くあります。また、集合視聴する場合などは、大型モニターやデジタルサイネージが利用されることもあります。
社内コミュニケーションは継続的な活動ですので、立ち上げて終わりではなく、企画時から持続可能な運用を考えておく必要があります。動画活用に関する運用業務には、コンテンツの企画から始まり、社内外の出演者・関係者への協力要請や調整、スケジュール管理、撮影・編集といった動画制作、動画公開・管理、告知、効果検証といったものがあります。持続可能な運用のためには、目的のコンテンツ内容や本数をアウトプットできるよう、各業務について外部コストと内部コストを適切に配分すると同時に、次の企画や運用に活かせるようなノウハウの蓄積が不可欠です。
しかし、全ての業務を社内のリソースで賄うことはなかなか難しく、一部の業務を社外に委託している企業も多いです。各運用業務を「社内でやるべき業務」と「社外に出す業務」に仕分ける必要がある場合、その判断に迷うこともあると思いますので、ひとつの目安ではありますが、業務を仕分けるための判断項目を以下にチェック形式でまとめました。
チェックの対象となる業務は、たとえば、動画制作やコンテンツ管理というような大きなくくりで検討する場合もありますし、内容や作業単位で仕分ける場合もあります(例:同じ「制作業務」でも、高度な演出を必要とするものは社外に委託し、演出が不要な日報的な動画などは社内で実施するなど)。
判断項目 | A(→社内でやるべき業務) | B(→社外に出す業務) |
---|---|---|
コスト削減の優先度 | □外部コスト | □内部コスト |
稼働時間 | □少ない | □多い |
更新頻度 | □少ない | □多い |
社内ノウハウの蓄積 | □要 | □不要 |
従業員発の情報発信 | □要 | □不要 |
制作・配信に関する高度な技術とスキル | □不要 | □要 |
たとえば、検討する業務が「まずは、固定カメラで撮影してみよう」といった場合や、「試験的に動画を1-2本公開してみよう」であったり、「各部から動画をアップしてもらえるよう体制を作ってみよう」といった場合は、A(社内でやるべき業務)にチェックが入ることが多いと思います。一方、「映像制作で、凝った演出や編集をしてみたい」といった場合や、「多くの動画を効率よく管理したい」であったり、「ロケ収録を行いたい」といったような場合は、B(社外に出す業務)にチェックが入ることが多いと思います。具体的な利用シーンと照らして、自社の判断基準に応じて無理のない、適切な人的・時間的・金銭的コストで運用を検討してみてください。
今回は、動画活用のメリット、業務設計に動画を導入する際に共通する企画の立て方、運営業務設計の考え方について整理しました。この後、第2-3回では、社内広報・社内研修・情報共有の利用シーン別に、当社のお客様の事例なども交えて具体的にポイントや十分な成果を得るための方法を解説していきます。
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