最適な動画コーデック選択のために、押さえるべき3つの視点

2021.06.10

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こちらの記事「コーデックとは? 動画配信に必要な基礎知識」ではコーデックに関する基礎知識として
・コーデックは、映像や音声データをエンコード(符号化)/デコード(復号化)するプログラムである
・同じファイル形式でもコーデックが違えば別モノである
・動画再生時には、エンコード時に使用したコーデックが受け手の視聴環境にも必要となる
といった点について解説していますが、本記事では「最適な動画コーデック選択のために、押さえるべき3つの視点」として「圧縮率」「標準化」「視聴ターゲット」について解説します。

視点1:圧縮率 | 高画質なネット動画をより流通・配布しやすくする

動画とは、連続する画像の集まりで動きを表現しており、非圧縮の場合は膨大なデータ量になってしまいます。そこで効率的に動画データを記録・保存するため、圧縮技術が発展してきました。圧縮技術はコーデック開発の肝のひとつです。圧縮技術を用いることにより、動画などのデータ量の多い情報であってもたくさん記録したり、同じ容量でもより高画質にできたり、データ量を小さくすることで流通・配布しやすくなります。そのためコーデック選択に際して「圧縮率」は重要な視点と言えます。

「非可逆圧縮」と「可逆圧縮」2つの圧縮方法

データ圧縮方法には、視覚に影響のない範囲でデータを間引き軽量化させる「非可逆圧縮」と、データの間引きは行わず伸張すると元のデータ量に戻る「可逆圧縮」の2種類があります。まったくデータ圧縮をしない「非圧縮」ではデータ量が非常に大きくなるため、動画の取り扱いでは圧縮データが多く使われます。動画配信では非可逆圧縮のコーデック、なかでもMPEG-4 AVC、YoutubeではWebMといった圧縮率の高いコーデックが多く使われます。

圧縮率の高いコーデック

例えばMPEGは、1993年のMPEG-1の誕生から、MPEG-2(1995年)、MPEG-4 AVC(2003年)などの「MPEGシリーズ」があります。MPEG-4 AVCはMPEG-2の約2倍の圧縮率と言われています。つまり、DVD映像の規格はMPEG-2の約8Mbpsに定められていますが、計算上で言えばMPEG-4 AVCで圧縮すると約4Mbpsで同等の画質を得られることになります。圧縮率が倍になるということは、同画質の映像を配信する際にファイル容量が半分になり、配信時の通信帯域も半分で済むことになります。

圧縮効率の向上により、同じ画質でも少ないデータ量で済むため
・動画配信サーバーの負荷を抑え、サーバーダウンや表示遅延のリスクを減らすことができる
・通信回線の逼迫を回避し、視聴者に情報を届けやすくなる
・動画の高画質化が期待できる
といったメリットがもたらされます。
なお以下【デモ1】は、同じビットレートで左がMPEG-2、右がMPEG-4 AVCの各コーデックを用いて圧縮したものですが、画質の違いは明らかです。

【デモ1】コーデックによる画質比較(MPEG-2、MPEG-4 AVC)


編集用途に向いたコーデック

配信用途ではなく、編集用途に向いたコーデックというものもあります。圧縮率の低い(つまり、データの劣化が少ない)ProResやDNxHD、MXFなどが挙げられます。これらの映像コーデックはファイルサイズは大きいですが、圧縮率は低いのでパソコンなどの編集機器にかかる負荷は少なくなります。そのため、編集自体は圧縮率の低いコーデックの映像素材で行ったうえで、編集後に、高圧縮なコーデックで別途エンコードして配信用ファイルを作ります。

視点2:標準化 | コーデックの普及状況に大きな影響力を持つ

動画再生には、発信者がエンコードした「映像データのコーデック」「音声データのコーデック」と同じコーデックが、受信者側の視聴環境にも入っていてデコードする必要があります。そこで、コーデック選択の視点の2つ目としては、普及状況を意識する必要があります。
コーデックは様々なところに入っています。機器や端末、ブラウザ、パソコンのOSなどですが、各メーカーの各コーデックへの対応に大きな影響力を与えるのが「標準化」です。

標準化は大きく分類すると
1)社内標準(企業で独自に定めた規格)
2)業界標準(業界独自に制定。互換性などの点でメリットがある)
3)国家標準(国が法律に基づき制定。JISなど)
4)地域標準(複数国にまたがる標準)
5)国際標準(世界基準)

とあり、1)→5)の順番で影響力は大きくなります。国際標準とは、全世界において汎用的な利用に適していると認められたものなので、その規格は多くのメーカーや開発元に採用され、広く普及することになります。ブラウザやプレイヤー、再生端末などにそのコーデックがあらかじめインストールされるケースが増え、コーデックインストール不要となれば、受け手の動画視聴の敷居はぐっと下がります。そのため、コーデック選択の重要な視点として、標準化の動向についても注目する必要があります。

映像・音声データの圧縮符号化に関する国際規格を定める機関には、蓄積分野からスタートした「ISO/IEC JCT1」と通信分野からスタートした「ITU-T」があります。ISO/IECがMPEGシリーズを、ITU-TがH.26Xシリーズの国際標準の策定を行っており、H.262/MPEG-2、H.264/MPEG-4 AVCは両団体で共同策定したものです(図1)。

【図1】「MPEG」と「H.26X」各シリーズの標準化策定の流れ

】「MPEG」と「H.26X」各シリーズの標準化策定の流れの図

不特定多数を対象に広くリーチしたい場合、ある程度普及しているコーデックを選択することは重要な視点であり、その際に「標準化」を意識することが不可欠です。しかし、最新を追いかけるばかりがよいわけでもなく、国際標準規格となっても普及まではしばらく時間がかかりますので、注意が必要です。

視点3:視聴ターゲット | 受け手次第で最適なコーデックは変わる

H.265のような普及途中のコーデックについて、また、国際標準以外の社内標準規格についてどう考えるべきか?
――選択に際しては、視聴ターゲットや目的次第で考える必要があります。

例えば、マイクロソフトのコーデックにWMV7、WMV8、WMV9 、WMA9などがあります。これらは、社内標準規格ですが、Windowsマシンであれば、Windows Media Playerがインストールされており、同社のコーデックに対応しています。Windows環境は広く普及しており、Windows環境のオフィスやユーザーを対象にするのであれば、むしろコーデックの有無確認やインストール作業を考える必要はなく、非常に有効な選択と言えます。

またハイレゾですが、これは、可逆圧縮のFLACコーデックや非圧縮のWAVなどが使用されています。携帯音楽プレイヤーなどで広く使われているAACやMP3と比較すると、FLACやWAVのデータ量はとても大きくなりますし、普及率の点で不利とも考えられます。しかし、より高音質を楽しみたい人を対象にするならば、ハイレゾはとても魅力的ですし、ターゲットにとって対応機器の購入やFLACやWAV等への対応などは障壁にならないケースも多くあります。

国際標準規格H.265/HEVC、H.266/VVCの動向について

次世代コーデックとして注目を浴びていたH.265ですが、普及は一部の環境にとどまっています。また最新コーデックとしてH.266が2020年に発表されました。
H.265は、H.264/MPEG4 AVCの2倍の高圧縮率ですが、その反面「H.264/MPEG-4 AVCに比べエンコード時間が長い」「再生時のパソコンの負荷が高い」といった注意点があります。H.266は、H.265の2倍とさらなる圧縮率を誇りますが負荷も上がることになります。

さて、「H.265はなぜ広く普及していないのか?」と疑問に思われている方もいらっしゃると思います。これは「標準化」に関係があります。
有名なのがYoutubeで採用されているWebMというコーデックですが、このように「企業独自に開発されたコーデックや非営利団体開発のAV1など競争状態になっていること」、またH.265は「利用にライセンス料が発生すること」から幅広い普及には至っていません。

なおH.264が広く普及している要因の1つとしてライセンス関係を回避して生み出されたエンコーダー「x264」が大きく貢献しています。ライセンス関係を回避したことにより、多くのエンコードソフトに「x264」は採用され使われるようになり、H.264が広く普及していきました。

特定対象向けには新しいコーデックを配布しやすい

例えば、ドワンゴとNTTがニコニコ生放送でのH.265実証実験を2014年11月から開始しています。niconicoユーザーという特定された対象であれば、不特定多数と比較するとコーデック配布もしやすいと考えられます。

このように視聴ターゲットにより、コーデック選択は変わってきます。

終わりに

以上「最適な動画コーデック選択のために、押さえるべき3つの視点」として「圧縮率」「標準化」「視聴ターゲット」について解説しました。実際の運用では、日々めまぐるしく変化する技術と視聴環境の中で判断に迷うこともあると思います。そのような時は、プロに相談をしてみるのが一番の近道かと思います。最新コーデックやファイルとの組み合わせ例を熟知していることはもちろん、実績に基づき、目的や利用シーンにあわせた最適な選択を提示してくれると思います。

また、動画配信プラットフォーム(OVP)では、デバイスや帯域にあわせて動画を複数の形式に自動的にトランスコードする機能を標準搭載しています。OVPではトレンドにあわせてコーデックをはじめ各種仕様を随時更新していますが、各サービスで対応範囲は異なりますので、利用検討時にはよく確認しましょう。

当社OVP「J-Stream Equipmedia」では、1つの動画をアップするだけで、自動的にパソコン、スマートフォン、タブレット向けの動画配信ファイルを生成します。しかも1つの貼り付けタグで対応できるので、デバイス毎に動画を個別運用する手間を省くことができます。その他、再生プレイヤーの作成・管理、動画視聴のセキュリティ対応、視聴解析機能のほか、倍速エンコード機能なども備えており、Web管理画面上で管理・運用を一元化できます。

なお当社では、OVPのサービス提供以外にも1コンテンツからエンコードサービスを行っています。エンコードサービスでは、パソコン、スマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、Hybrid CastなどのTV向け配信をはじめ、様々な端末への配信に向けて幅広いコーデックに対応しており、動画素材の特徴や対象端末にあわせて適宜必要なエンコードの設定・調整を行っています。
また、エンコードだけでなく、映像・Web制作、ライブやオンデマンドでの配信、DRM対応など企画・制作から配信までをトータルにサービス提供しています。貴社の目的にあわせて、長年の蓄積とプロとしての経験値からご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

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