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2014.12.25

動画コーデック解説コラム【後編】 最適な動画コーデック選択のための3つの視点

前編では、コーデックに関する基礎知識として、
・コーデックは、映像や音声データをエンコード(符号化)/デコード(復号化)するプログラムである
・同じファイル形式でもコーデックが違えば別モノである
・動画再生時には、エンコード時に使用したコーデックが受け手の視聴環境にも必要となる
についてご説明しました。後編では、【最適なコーデック選択のための3つの視点】として「圧縮率」「標準化」「視聴ターゲット」を挙げ、解説します。

 

【視点1:圧縮率】高画質なネット動画をより流通・配布しやすくする

動画とは、連続する画像の集まりで動きを表現しており、非圧縮の場合、膨大なデータ量になってしまいます。そこで、効率的に動画データを記録・保存するため、圧縮技術が発展してきました。圧縮技術は、コーデック開発の肝のひとつです。圧縮技術を用いることにより、動画などのデータ量の多い情報であっても、たくさん記録したり、同じ容量でもより高画質にできたり、データ量を小さくすることで流通・配布しやすくなります。そのため、コーデック選択に際して、「圧縮率」は重要な視点と言えます。

データ圧縮方法には、視覚に影響のない範囲でデータを間引き、軽量化させる「非可逆圧縮」とデータの間引きは行わず伸張すると元のデータ量に戻る「可逆圧縮」の2種類があります。まったくデータ圧縮をしない「非圧縮」では、データ量が非常に大きくなるため、動画の取り扱いでは圧縮データが多く使われます。動画配信では、非可逆圧縮のコーデック、なかでもMPEG-4 AVCやWMV、DivXといった圧縮率の高いコーデックが多く使われます。

例えば、MPEGは、1993年のMPEG-1の誕生から、MPEG-2(1995年)、MPEG-4 AVC(2003年)などの「MPEGシリーズ」があります。MPEG-4 AVCはMPEG-2の約2倍の圧縮率と言われています。つまり、DVD映像の規格はMPEG-2の約8Mbpsに定められていますが、計算上で言えば、MPEG-4 AVCで圧縮すると約4Mbpsで同等の画質を得られることになります。圧縮率が倍になるということは、同画質の映像を配信する際に、ファイル容量が半分になり、配信時の通信帯域も半分で済むことになります。

圧縮効率の向上により、同じ画質でも少ないデータ量で済むため、
・動画配信サーバーの負荷を抑え、サーバーダウンや表示遅延のリスクを減らすことができる
・通信回線の逼迫を回避し、視聴者に情報を届けやすくなる
・動画の高画質化が期待できる
といったメリットがもたらされます。なお、以下【デモ1】は、同じビットレートで左がMPEG-2、右がMPEG-4 AVCの各コーデックを用いて圧縮したものですが、画質の違いは明らかです。

【デモ1】コーデックによる画質比較(MPEG-2、MPEG-4 AVC)


※音声はありません

 

また、配信用途ではなく、編集用途に向いたコーデックというものもあります。圧縮率の低い(つまり、データの劣化が少ない)ProResやDNxHDなどが挙げられます。これらの映像コーデックは、ファイルサイズは大きいですが、圧縮率は低いのでパソコンなどの編集機器にかかる負荷は少なくなります。そのため、編集自体は圧縮率の低いコーデックの映像素材で行ったうえで、編集後に、高圧縮なコーデックで別途エンコードして配信用ファイルを作ります。

 

【視点2:標準化】コーデックの普及状況に大きな影響力を持つ

前編で、動画再生には、発信者がエンコードした「映像データのコーデック」「音声データのコーデック」と同じコーデックが、受信者側の視聴環境にも入っていてデコードする必要があることをご説明しました。そこで、コーデック選択の視点の2つ目としては、普及状況を意識する必要があります。既述のように、コーデックは様々なところに入っています。機器や端末、ブラウザ、パソコンのOSなどですが、各メーカーの各コーデックへの対応に大きな影響力を与えるのが、「標準化」です。

標準化は大きく分類すると
1)社内標準(企業で独自に定めた規格)
2)業界標準(業界独自に制定。互換性などの点でメリットがある)
3)国家標準(国が法律に基づき制定。JISなど)
4)地域標準(複数国にまたがる標準)
5)国際標準(世界基準)

とあり、1)→5)の順番で影響力は大きくなります。国際標準とは、全世界において汎用的な利用に適していると認められたものなので、その規格は多くのメーカーや開発元に採用され、広く普及することになります。ブラウザやプレイヤー、再生端末などにそのコーデックがあらかじめインストールされるケースが増え、コーデックインストール不要となれば、受け手の動画視聴の敷居はぐっと下がります。そのため、コーデック選択の重要な視点として、標準化の動向についても注目する必要があります。

映像・音声データの圧縮符号化に関する国際規格を定める機関には、蓄積分野からスタートしたISO/IEC JCT1と通信分野からスタートしたITU-Tがあります。ISO/IECがMPEGシリーズを、ITU-TがH.26Xシリーズの国際標準の策定を行っており、H.262/MPEG-2、H.264/MPEG-4 AVCは両団体で共同策定したものです(図1)。

【図1】「MPEG」と「H.26X」各シリーズの標準化策定の流れ

 

不特定多数を対象に広くリーチしたい場合、ある程度普及しているコーデックを選択することは重要な視点であり、その際に「標準化」を意識することが不可欠です。しかし、最新を追いかけるばかりがよいわけでもなく、国際標準規格となっても普及まではしばらく時間がかかりますので、注意が必要です。

 

【視点3:視聴ターゲット】受け手次第で最適なコーデックは変わる

H.265のような普及途中のコーデックについて、また、国際標準以外の社内標準規格についてどう考えるべきか?
――選択に際しては、視聴ターゲットや目的次第で考える必要があります。

例えば、マイクロソフトのコーデックにWMV7、WMV8、WMV9 、WMA9などがあります。これらは、社内標準規格ですが、Windowsマシンであれば、Windows Media Playerがインストールされており、同社のコーデックに対応しています。Windows環境は広く普及しており、Windows環境のオフィスやユーザーを対象にするのであれば、むしろコーデックの有無確認やインストール作業を考える必要はなく、非常に有効な選択と言えます。

また、最近流行りのハイレゾですが、これは、可逆圧縮のFLACコーデックや非圧縮のWAVなどが使用されています。携帯音楽プレイヤーなどで広く使われているAACやMP3と比較すると、FLACやWAVのデータ量はとても大きくなりますし、普及率の点で不利とも考えられます。しかし、より高音質を楽しみたい人を対象にするならば、ハイレゾはとても魅力的ですし、ターゲットにとって対応機器の購入やFLACやWAV等への対応などは障壁にならないケースも多くあります。

なお、動画関連での最新の国際標準規格であるH.265ですが、普及にはもう少し時間がかかると言われています。H.265は、H.264/MPEG4 AVCの2倍の高圧縮率ですが、現時点のパソコンでは、H.264/MPEG-4 AVCに比べエンコード時間が長い、再生時のパソコンの負荷が高いといった点が挙げられます。また、2014年11月末時点では、主要ブラウザも非対応です。

では、H.265でのネット配信のタイミングはいつなのか、というとやはり「ターゲット次第」だと言えます。ターゲットが不特定多数の場合は、十分に普及するまで待つことが一般的です。しかし、特定のユーザーを対象にする場合ならば、問題ない場合もあります。

例えば、NTTドコモでは、2014年夏モデルでスマートフォンとタブレットのH.265対応を行っています。また、5月よりdアニメストアでのH.265対応コンテンツの対応を開始しています。H.265は、同社が標準化を推進した国際標準規格ですが、H.264/MPEG-4 AVCの2倍の高画質化は、新機種の大きな差別化要因になります。また、圧縮効率が高まることによりトラフィック緩和とネットワーク負荷軽減ができ配信側にとってもコスト面でのメリットもあります。コーデックの配布は、事前に端末にインストールされているため心配ありません。

また、ドワンゴとNTTがニコニコ生放送でのH.265実証実験を11月20日より開始しましたが、niconicoユーザーという特定された対象であれば、不特定多数と比較するとコーデック配布もしやすいと考えられます。

このように視聴ターゲットにより、選択するコーデックは変わってきます。

 

【終わりに】

本コラムでは、「コーデック」について概説しましたが、実際の運用では、日々、めまぐるしく変化する技術と視聴環境の中で、判断に迷うこともあると思います。そのようなときは、プロに相談をしてみるのが一番の近道かと思います。最新コーデックやファイルとの組み合わせ例を熟知していることはもちろんですが、実績に基づき、目的や利用シーンにあわせた最適な選択を提示してくれると思います。

また、動画配信プラットフォーム(OVP)では、デバイスや帯域にあわせて動画を複数の形式に自動的にトランスコードする機能を標準搭載しています。OVPでは、トレンドにあわせてコーデックをはじめ各種仕様を随時更新していますが、各サービスで対応範囲は異なりますので、利用検討時にはよく確認しましょう。

当社OVPの「J-Stream Equipmedia」では、1つの動画をアップするだけで、自動的にパソコン、スマートフォン、タブレット向けの動画配信ファイルを生成します。しかも1つの貼り付けタグで対応できるので、デバイス毎に動画を個別運用する手間を省くことができます(オプションでフィーチャーフォン向けにも対応可能です)。その他、再生プレイヤーの作成・管理、動画視聴や管理画面へのセキュリティ対応、動画の貼り付けタグや視聴ページの自動生成、視聴解析機能のほか、倍速エンコード機能なども備えており、Web管理画面上で管理・運用を一元化できます。

なお、当社では、OVPのサービス提供以外にも1コンテンツからエンコードサービスを行っています。エンコードサービスでは、パソコン、スマートフォン、タブレット、フィーチャーフォン、IPTV(アクトビラ)をはじめ、様々な端末への配信に向けて幅広いコーデックに対応しており、動画素材の特徴や対象端末にあわせて適宜必要なエンコードの設定・調整を行っています。

また、エンコードだけでなく、映像・Web制作、ライブやオンデマンドでの配信、DRM対応など企画・制作から配信までをトータルにサービス提供しています。貴社の目的にあわせて、長年の蓄積とプロとしての経験値からご提案いたしますので、お気軽にご相談ください。

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